独自ドメインのメアドをデジタル身分証に使ってはいけない理由
個人でドメインを取り、好きなメールアドレスを作る。
そのアドレスを銀行、保険、行政サービス、証券口座、Amazonの登録でも使ってないだろうか。
もしYESなら、あなたは知らないうちにかなり危ういことをしている。
昔は自分だけのドメインを取り、好きなメールアドレスを作ることはプロっぽいし、「わかってる人」感がある。2000年代後半から2010年代にかけて、技術者やブロガーの間でわりと流行った。
その頃と今を比較しながら、なぜ危険かを考えてみた。
2000年代のメールアドレスは「連絡先」だった
2000年代前半のインターネットを思い出してみる。
- 個人サイト
- 掲示板
- ブログ
- メーリングリスト
- 趣味コミュニティ
この頃のメールアドレスはあくまで「連絡先」の一つだった。
仮にメールアドレスを失っても、
- 新しく作ればいい
- 周囲に知らせればいい
- 最悪、少し困る程度
という感覚だった。
当時は今ほどメール=本人確認ではなかった。
ログインIDが別に存在するサービスも多く、メールアドレスを変えても大事故にはなりにくかった。
独自ドメインのメールアドレスを持つことが個性やオシャレとして成立していた。
今のメールアドレスは「デジタル身分証」になった
現在、メールアドレスの役割は完全に変わった。
- ログインID
- 本人確認の起点
- パスワード再発行先
- 契約・申請・決済の証跡
- 通知・履歴・証明の送信先
今のメールアドレスはデジタル世界の本籍地のような存在になっている。
メールアドレスを失うことは単に連絡手段を失うだけではない。
- 各種サービスにログインできない
- パスワード再発行できない
- メールアドレス変更ができない
- 契約確認できない
- 本人確認ができない
という状態に直結する。
昔と今では「メールアドレス」という言葉は同じでも実態はまったく別物。
メールアドレスを失うと人生詰みかねない。
ドメインが失効したとき、何が起きるか
若い頃は見落としがちだが、年齢を重ねると現実感を持ってくる問題がある。
それは自分が突然管理できなくなる可能性。病気、事故、長期入院、あるいは突然死。
独自ドメインは更新を怠れば失効する。
失効したドメインは第三者が再取得できる。再取得した人物はあなたがかつて使っていたメールアドレスをそのまま復元できる。
その状態で「パスワードを忘れた」をクリックされたら? あなたの銀行、証券、ショッピングサイトのリセットメールが、見知らぬ誰かの手に渡る。
メールアドレスの消失がそのままアカウント乗っ取りになる。
家族にとっても対処不能なメールアドレスになりがち
例えば本人が突然亡くなった場合、家族は
- 銀行
- 保険
- 行政
- 相続
- 契約解除
など、膨大な手続きを抱える。
そこに独自ドメインのメールが絡んでくる。
乗っ取りが始まれば、各種サービスのパスワード再発行先が第三者に渡る可能性が生まれる。
故人の銀行口座を解約しようとしたら、すでに見知らぬ誰かにアクセスされていた事態が、起きうる。家族には、何が起きているのかすら見えない。メールが届かないのだから、不正アクセスの通知も来ない。
遺族にとっては悲しみの中でデジタル被害の後始末まで背負うことになりかねない。
なぜGmailやOutlookは基盤として信頼できるのか
デジタル身分証の基盤にはGmailやOutlook一択になる。
- 長期的に安定運営される可能性が高い
- アカウント削除後の再利用がされない(=一度使われたメールアドレスが他人に再割り当てされない)
- 無料または現実的な価格で維持できる
- 乗っ取りや不正アクセスに強い(2段階認証など対応)
独自ドメインはブログのドメインとしてなら良い
独自ドメインそのものが悪いわけではない。例えば、ブログに使っているドメインなら問題無い。
独自ドメインが更新できず、失効した場合もそれらのサイトが消滅するぐらいになる。
自分がいなくなる前提で設計した方がいい
若い頃は自分がずっと管理できる、何かあっても復旧できるという前提で物事を考えやすい。
年を取ると突然、自分が管理できなくなるという可能性を考える必要が出てくる。
- 家族が困らない
- 放置しても破綻しない
- 自分が不在でも回る
という構成の方が長期的には安全だと思う。
独自ドメインのメールアドレスをやめる手順
以下のような流れになる。
- 今後使うGmailやOutlookのメールアドレスを決める。
- 今時点で把握している登録サイトのメールアドレスを変える。
- 独自ドメインは引き続き契約更新し、メールを確認できるようにする。
- 受信トレイを確認し、独自ドメインのメールアドレスで届いたものはGmailやOutlookのメールアドレスに変更する。
- このチェックと変更を数年は最低行う。変更し続ける。
もし独自ドメインのメールをGmailに転送して集約しているとき、変更中は混在してしまうのがネックかもしれない。
届いたメールがどちらに届いているか知りたいなら、自動振り分けルール(フィルタ)でToアドレスを元にラベル付けを行うと分かりやすい。
受信トレイの一覧上で区別できるので変更がしやすくなる。
まとめ
昔のインターネットならメールアドレスは消えても少し困る程度の存在だった。
しかし今は違う。メールアドレスは社会インフラの中心に組み込まれている。だからこそ、メールアドレスには長期安定性が求められるようになった。
デジタル身分証になるメールアドレスにはGmailやOutlookを使うこと。
ITが得意な人ほど自分はちゃんと管理できるという自信がある。
でも更新忘れ、突然の入院、死があればメールアドレスが無くなるだけではなく、第三者に利用されてしまう恐れもある。アカウントの乗っ取りも可能になる。
独自ドメインのメールアドレス、本当にデジタル身分証にして大丈夫か見直してみてほしい。